接客業でも販売業でも、仕事においてとても大事なのは、人と人とのつながりというものです。もちろん、どの商売でも商品やサービスなどの固定されたものを売るわけですが、それだけあればお客様が満足してくれるというわけではありません。やはり、商品やサービスを紹介して売る、その人そのものが重要になるのです。私も接客業をずっとしてきた者として、この「人」ということの重要性を身をもって体験してきました。「人間力」が高い人ほどたくさんの商品やサービスを売ることもできますが、それ以上にお客様に喜んでいただいて、お互いに良い気持ちで時間を過ごせるという、仕事からの満足感、やりがい、幸せを得られるというのが大事なポイントだと思います。
お客様がスタッフの接客を気に入ってくれるかというのは、意外とスタッフとお客様が出会ったその瞬間に大きく決まると思います。お互いに人間ですから、当然フィーリングというものがあるのです。このフィーリングについては、「なんとなく」という感覚的なものも多いのですが、やはり人間力の高い人は、このフィーリングが合う人の数が多く、より多くのお客様に気に入ってもらえるようになるものです。会ってすぐのこのフィーリングというのは、その後の関係に影響するもので、ずっと最初の感情が引きずられていくことも珍しくありません。
そのため、お客様商売をしているのであれば、お客様に会うその瞬間というのを大事にすべきだと思います。最初の表情、初めに投げかける言葉、最初のジェスチャーなどが、お客様の自分に対する印象に深く影響するということを意識するのです。これは自然とできることではありませんし、それぞれの人が持っている性格というだけのものではありません。やはり、人間力というのは一つのスキルですので、意識して磨くことによって向上できるものです。第一印象を好ましく思ってもらえるというスキル、技術を身に着けられるように努力することが大事なのだと思います。少し前にはなりますが、「人は見た目が9割」(竹内一郎/著)という本もブームになっていましたよね。
このためにできることとしては、やはり一つ一つの所作を自己分析して改善していくことです。たとえば、鏡の前で自分の一番さわやかだと思える笑顔を作って練習する、自分の声を録音して明るく聞こえるトーンがどこなのかを探ってみるなどです。ちょっとした違いによって、かなり与える印象は異なるものですので、こうした努力は必ずお客様からの好印象という結果になって返ってくるはずです。